12 ヤバい聖職者も凸してきた

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「なるほど。あなたの名はパーナムというのか。ようこそ、パーナム」  夫の声は冷たく静かで、彼を軽蔑し嫌悪している。  わかる。私も、同じ気持ち。 「神の騎士の方々も、ようこそ。私が第7代メランデル伯爵パール・フェーリーンですが、なにか?」  怒っている。  神聖な大聖堂で孤児を誑かし、我が身が危なくなったらその孤児を魔女呼ばわりして、延いては顔の似た伯爵を見つけたら成り代わろうとするなんて、とんでもない極悪人だ。 「仮にあなたが真のメランデル伯爵であるなら、魔女を差し出したほうが身のためです」 「魔女なんていません」 「ではなぜ、堕ちた修道士を探していたのです? 知っているからでしょう?」 「なにを? 私は、私に似た男がいるという噂を聞きつけたから、その男を探していただけです」 「その噂を誰から聞いたと仰るのですか? パーナムの件は極秘事項です」 「だから名前は今知りましたよ。噂の提供主は先代のメランデル伯爵夫妻です。旅行が趣味で、私によく似た修道士が教皇庁から追われているらしいという噂を聞きつけて、心配して手紙をよこしたのです」 「その手紙を見せて頂けますか?」 「ありません。気味が悪いので燃やしました」 「なるほど」 「汚らわしい極悪人の戯言など耳を傾ける必要はない! 殺せぇッ!!」  汚らわしい極悪人のパーナムが叫んだ。  私は夫の制止を振り切って進み出ると、彼の目の前まで歩いて行って、彼を見あげた。 「私は物心ついた頃からパールと仲良しですが、あなたとは目の色が違う。よく似ているからといって、私の夫を名乗るなんて無謀すぎましたね。ここには私を含め、彼を幼い頃から知る人間しかおりません。できるだけ早く悔い改めたほうが身のためですよ」 「大淫婦め……!」  パーナムは血走った目で私を睨みつけたけれど、聖騎士団のひとりが素早く庇ってくれた。 「少し似ているけれど、別人です」  静かに告げる。  承知している事を表す瞳で一瞥され、私は微笑み、夫の傍へ戻った。 「じっとしていてくれてよかったわ。近づいたら、まとめて縛られてしまうもの」  苦々しい溜息を吐きながら、夫が私を抱き寄せた。 「私がメランデル伯爵だッ!!」  堕ちた聖職者は、顔を真っ赤にして叫んでいる。  分が悪い事は、誰の目から見ても明らかだった。
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