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「どこへ行くのだ」
「帰るのです。私のうちへ。ご安心ください。私は自分の恥をしゃべるようなことはしませんから」
「君はまだ分かってないのか。本当にお気の毒だ。オレは冗談ではなしに君のために泣いてやりたいくらいだ。ああ、何という因果な俺の心だ。俺はお前を愛しているのだ。それにも関わらず、俺はお前を湯殿に連れていこうとしているのだ。俺は普通の恋人のように、お前の心など欲しくはない。体が欲しいのだ。命が欲しいのだ……ああ、俺は人間ではない。悪魔なのだ。野獣の化身だ」
蜘蛛男は哀れな生贄の女性の首に腕を巻きつけ、湯殿の方へ進んでいく。
「僕はね。恋人を愛するだけでは満足出来ないのだよ。恋しければ恋しいほど、その相手を責めさいなみたいのだよ。そして最後には、恋人の断末魔の血みどろの美しい姿を見ないでは、どうにも気がすまないのだ」
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