📚乱歩関係蔵書①幻影城増刊『江戸川乱歩の世界』

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📚乱歩関係蔵書①幻影城増刊『江戸川乱歩の世界』

919a4e24-37a5-48f6-ab26-5cfca60f53cee5ed51b9-7a2b-45a1-92bd-731667b11abb 「幻影城・7月増刊 江戸川乱歩の世界」(1975 絃映社→株式会社幻影城)  江戸川乱歩(えどがわらんぽ)に関する評論、研究をアンソロジーとしてまとめたミステリー研究に不可欠な資料。  横溝正史(よこみぞせいし)中島河太郎(なかじまかわたろう)夢野久作(ゆめのきゅうさく)など書下ろし、再録など錚々たるメンバーが執筆。再録自体、現在ではこの本でしか読むことの出来ない評論や研究もある。  この素晴らしい本を編集したのは、ミステリーのファンであり、戦前の探偵小説の再評価を強く願っていた島崎 (しまざきひろし)(1933~ )である。日本に住んでいた台湾の方である。本名は傅金泉(フージンチュアン)。  氏は私費を投じて戦前のミステリー(探偵小説)の再評価のため、探偵小説専門誌「幻影城」を創刊。忘れられていたミステリー作家の作品を次々と紹介。  さらに彼らの傑作集を増刊として刊行した。  社会派ミステリーの巨匠であり、当時のミステリー作家の中心であった松本清張(まつもとせいちょう)元々横溝正史(よこみぞせいし)に代表される戦後の「探偵小説」に批判的だったこともあり、新聞紙上で、 「探偵小説再評価というが評価に値しない作品が次々と紹介されるのは如何なものか」(要旨) と批判的な立場を明らかにした。  私費を投じた島崎の努力は1979年に終止符を打ち、「幻影城」は休刊。経済的に破綻した氏の厖大な蔵書は失われた。  氏は台湾に帰国。  日本に住み日本への批判的言動を行う外国人がもてはやされる一方、日本人が忘れた文化を愛しその復興に尽力した氏に日本は冷淡だった。  この本を手に取る度に敬虔な思いに打たれる。
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