ただよって、ただよって

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 そんなこんなで過ごしていたら、自分の資産もなくなっていた。世の中は本当に世知辛いものである。だから僕はしょうがなく金融会社から金を借りた。直ぐに競馬で倍にして返してやろうと思ってね。  だけど、その時はなかなか調子が出なくて負けを繰り返してしまっていた。こういうものは時の運というやつがあるから、暫くしたら勝てるだろうと時期を見計らっていたのだが、金融会社の奴等は金と期限に煩くてね。期限をほんの少し過ぎただけで「さっさと金を返せ」だの喚いてくる。こっちは客なのだからもっと敬意を払って欲しいものだ。  仕方なく別の金融会社から金を借り、支払いを済ませてやった。なのだが、今度は新しく借りたところからも取り立てが来た。ただ、前の所と違うのは、かなり暴力的であるというところだろうか。  そんな借りた返したを繰り返す毎に取立屋の暴力性が増していった。全く、世の中は金にがめつい奴らばかりだ。このままではいたちごっこになると思い、僕は奴らと距離を置くことにした。しばらくすれば奴らも大人しくなり、僕の言うことにも耳を貸すという算段だ。
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