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 ある少女、学校で窓際の席に座っている。授業中、窓の外を見る。校庭があり道路があり川があり、その向こうに丘がある。その丘に老人ホームが見えた。少女には友だちがいる。美人の友だちだ。少女は自分でもかわいい顔をしていないと自覚している。そんな少女にもあこがれの先輩がいる。友だちは少女がその先輩が好きなことを知っている。  ある日、いつものように少女が窓の外を眺めていると、老人ホームで光が明滅しているのに気づいた。なんだろうと気になって調べると、モールス信号で「元気ですか」と送っているようだ。こちらからもなにか送ろうとしたが、日光の当たり具合でうまくいかなかった。つぎの日の昼休み、少女は友だちから先輩とつき合うことになったことを知らされた。裏切られた気分になる。授業にも身が入らない。窓の外の老人ホームからは相変わらず「元気ですか」の光が点滅している。少女のなかでなにかがふっ切れた。元気なわけないと大声を出して教室を飛びだす。校門を出て、老人ホームへ向かう。そこで信号を送っていた老人に出会った。派手な格好をした女性だった。あの信号を見てここまで来たのはあんたがはじめてだと笑われる。少女はどうしていいかわからず、友だちに裏切られた話をした。老人は笑って、恋愛は見た目で決まるものではないといった。また、なにかあったらおいで。ここは老人ばかりでひまなんだといわれて、送りだされる。少女は学校へ帰る。両親や教師に散々叱られた。それからも授業中、老人からの信号が来る。その光は「元気だすか」といっていた。  青春の話はいいですね。小説のようなきれいな青春はなかなか送れないから余計に惹かれるのかもしれません。
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