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 ある少女の姉が自殺してから一年がたつ。少女は姉が死んだのは自分のせいだと思っている。  少女には友だちがいる。その友だちからある男子が少女のことを好きだといわれた。たまたまファミレスでふたりきりになったとき、その男子から告白される。少女はどうしたらよいかわからず、断る。そのときに知ったのだが、男子の両親は離婚して、母親が再婚した義父と折り合いが悪いそうだ。少女は少女で別の悩みを抱えていた。最近、友だちが別の女子と仲良くしている。このままではグループから外されかねない。少女の姉も仲間外れにされていじめを受けていた。明るい姉だったが、いじめられてからは暗くなり、学校へも行かなくなった。そして、突然首を吊った。  少女は告白してきた男子がほかの女子生徒と別れた場面を見る。自分への告白は本当だったのかとうたがう。いろいろを抱えるなか、少女は友だちたちとキャンプへ行く。そこで男子から改めて告白される。少女はその場で返事をしなかった。ひと晩おいて告白を受けるメールを送った。しかし、逆に男子から本当に好きなのかと返事が来る。結局、ふたりがつき合うことはなかった。しばらくしてその男子はまったく別の女子とつき合いだした。あるとき、その男子とたまたまふたりになった。男子が落ちこんでいるので、なにかあったのかとたずねる。母親が病気になったという。手術は成功したが、自分のせいで親に負担をかけていたのをひどく後悔していた。少女もそうだ。姉が死ぬ三日前、ふたりしてケーキ屋のバイト面接を受けた。姉のあこがれの店だった。結果は少女が合格し、姉は不合格だった。姉はおめでとうと部屋へ消えた。その背中がさびしかったのを覚えている。少女は男子にいった。あなたのせいじゃない。ずっと言われたかった言葉を男子にいうことで、少女は自分も許されたような気がした。  姉の自殺に責任を感じている少女が友だちや男子との関係のなかで、向きあっていく話でした。小説のなかの人物はずいぶん不幸な境遇ですが、正面から向きあっていますね。現実とはちがうところでしょう。
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