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 ある夫婦、結婚したばかりだというのに関係が冷えきっている。夫の借金のせいで都会から田舎へ引っ越すはめになった。田舎の屋敷の窓枠に女性の名前が刻まれている。妻と同じ名前だ。夫はこの名前に惹かれて妻と結婚したのだが、なぜそうしたのかいまとなってはわからない。妻にしても、出自がまったく不明である。家族の話も聞かないし、本名を名乗っているかも不明だ。こんな屋敷でも使用人や庭師がいる。そんなぼろ屋敷の庭に池がある。ある日、その池に不気味な魚がいるのを妻が発見した。庭師を呼びつけて、監視するように言う。魚を見てから妻がおびえはじめた。妻がどこから聞いてきたのか昔ばなしをはじめる。自分と同じ女性が海で男を捨てて、その男は復讐のためにいまも女性を追っているという。しかし、妻と女性が同姓同名だといっても女性は数百年前の人物だ。生きているわけがない。それでも妻の恐怖はふくらんでいく。そして、ある夜、妻の悲鳴が屋敷に轟いた。夫と使用人が飛びおきて妻の寝室へ行くと、妻が血を流して死んでいた。窓の外にはあごが血で染まった魚のすがたがあった。  大昔に捨てた男の呪いで殺された女性の話でした。なぞが多い怪奇小説でしょうか。
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