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 ある男性が妻とともに営む食堂にひとりの男がやってきた。男性がそいつを見ておどろく。それもそのはず、十五年前に外国で殺した男なのだ。どうして生きている。なぜやってきた。男性は混乱する。男のほうも男のほうで「わたしだって死んでいたかった。あいつらの秘術で生きかえらせられたのだ。頼れるのはお前しかいないと逃げだしてきた」という。その日以来、男性の食堂に男が居座るようになった。死んだ男なので店の空気が悪くなる。男性は妻や客に対して知りあいだとごまかすが、それも限度があった。どんどん客足が遠のいていく。男性がいい加減出ていってくれという。男はお前が殺したのだ。お前が責任をとれと返す。つまり、ふたたび殺せということだ。男性は悩む。この男を殺したあとはどうなるだろうか。逮捕、絞首刑。悪い想像がよぎる。しかし、殺さずこのままにしておいたらなお悪い。男性はナイフを持ちだして男を刺した。大きな物音に妻がやってくる。あの男のすがたが消えていた。男性は妻に言う。「いつまでもいたら悪いといま出ていった」これで終わったのだ。  殺したはずの男がやってくる話でした。ホラーとはちがうふしぎな雰囲気でした。
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