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 ある男性、道を歩いていると、三人組の男からこんな頼みごとをされる。「あそこに立っている女性にボルドー行きの乗合馬車は何時に出るか聞いてくれ」妙な願いだと思いながらも男性は女性のもとへ行ってそのとおりにたずねた。すると、急に女性が怒鳴る。そんなことは警察に聞いてください。しかたがないので男性が近くの警官を呼びとめて同じ質問をすると、たちまち逮捕されてしまった。裁判で男性がただ質問をしただけだというとみな顔をしかめる。陪審員も男性のおこなったことを聞いて全員一致で有罪となった。七年間牢屋に入る。牢屋の囚人仲間にどんな罪でここへ来たんだと聞かれることがある。男性が質問をしただけだというと決まってそれ以来口もきいてくれなくなった。いったいどういうことなのだ。刑期を終えた男性はあの女性を探した。あのときと同じ場所に女性はいた。あなたのせいでわたしは牢屋に入れられたのです。事情を説明してください。男性は女性の家に招かれた。女性が酒を注いでくれたので口にする。女性もその酒を飲んだ。いよいよ、わけが明らかになると思いきや、女性が倒れた。見ると、死んでいる。なぞはなぞのまま。  結末でなぞが明かされないまま終わる話です。こういう話もたまにはいいと思います。
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