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 登山客が集まる街がある。街には山で亡くなったひとの墓碑がある。一か月前に死んだふたり組も載っていた。その街にいる精神科医の男性、登山を趣味としている。その昔ある女性と婚約したのだが、結婚前に精神を病んでしまい、急死してしまった。そんな男性が気にかけている少女がいる。その少女は弟ともに登山を好んでいた。今日は一か月前にふたり組が死んだ山を登っている。もうそろそろ兄弟が帰ってくるころだ。男性が兄弟を迎える。ところがどうも少女の様子がおかしい。弟に事情を聞く。ふたり組が死んだ現場を見たらしい。その雪原にあるはずのない足あとが見えたという。少女はひどくおびえていた。幽霊に連れ去られてしまうとパニックだ。男性は少女を落ちつかせようとするが、追い打ちをかけるように手紙が届く。差出人は死んだふたり組だった。男性がいたずらだというが、少女の恐怖は消えない。手紙は一通で終わらなかった。悪いことに消印が押されている場所がどんどん近づいている。この街にとどまっているのは得策ではないと思った男性は、兄弟を連れて別の山へ向かうことにした。ガイドを従えて別の街を目指す。街をはなれてすこしは元気を取りもどしたかに見えた少女だったが、ある雪原でまた不可解な足跡を発見する。全員が目撃した。山小屋へ着いた少女はひどくおびえていた。男性は弟に少女をひとりにしないよう言いつけて、自分は寝ずの番をするつもりだった。しかし、登山の疲れて眠りに落ちる。寒さで目が覚めた。山小屋のとびらが開いている。兄弟を探すが、すがたが消えている。ガイドをたたき起こして兄弟のあとを追う。雪の上にはまだ兄弟の足跡が残っていた。山を越え、空が白んでくる。兄弟のすがたが見えた。なにかに追われるように猛スピードで危険な斜面を登っている。ガイドが追いかけるが、差は大きい。声を張りあげるも、兄弟は聞こえていないようだ。やがて兄弟は崖へ達する。もう間に合わない。兄弟は男性たちが見ている前で氷の裂け目へ落ちていった。遺体が救出されたのは翌日になってからのことだった。兄弟の遺体は男性の希望によって山ではない平地の街へ埋葬された。男性が兄弟にたいして特別な感情をいだいていたのはみなが知ることだった。  死者にとりつかれて命を落としてしまった兄弟の話でした。作者が実際に登山が趣味らしく、山の描写に迫力がありました。
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