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 女性ふたりが旅をしている。道がわからなくなった。列車の音が聞こえる。それを頼りに街道へ出た。しかし、ひとのすがたはない。閑散とした場所だ。歩いていくと、酒場があった。そこでこの先の情報を聞く。つぎの街までは遠い。あいだには一軒屋敷があるだけだ。その屋敷には老いた女性がひとりで暮らしているとか。いつもとおる列車に手を振るので有名らしい。ここらへんは静かの谷と呼ばれているようだ。ふたりは街を目指して出発する。降りだした雨に足の進みは遅い。けっこうな頻度で列車がとおる。街へはつかない。屋敷で一泊させてもらうことに。屋敷をたずねると、男性と使用人が出てきた。話を聞くと、住んでいた女性は最近亡くなったらしい。男性は女性の親戚だそうだ。ふたりは屋敷に世話になる。屋敷のすぐそばを線路がとおっている。列車が来るたびに音がして屋敷が揺れる。男性の祖父がこの路線を作ったらしい。男性と食事を共にする。女性のひとりが用意された部屋に帰ると、暗い廊下で女性の影を見かけた。まさか死んだはずの女性ではとおびえる。男性のもとに戻る。もうひとりの女性と男性はずいぶん親しくなったようだ。女性は疲れたので部屋で寝ることにした。列車の音で眠れない。ようやく寝たと思ったら、真夜中に目が覚める。近くに女性のすがた。おどろいて見ると、使用人だった。ただならぬ雰囲気。危害をくわえようとしているのがわかる。女性はナイフを取りだして首に突きさした。このさわぎと同時に男性といた女性にも事件が起こったらしい。あわてて部屋へ駆けてくる。追ってくる男性が来る前にとびらを閉めて鍵をかける。男性は食いとめられたが、部屋から出られない。窓には鉄格子がはめてある。そこへ列車がとおる。女性は窓から手を振った。その思いが列車の運転手に伝わることはない。  なぞは最後まで明かされませんでしたが、描写が細かくて情景が浮かぶようでした。いわれのある屋敷の話はおもしろいです。
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