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 ある少年、両親が仕事の関係で外国にいるため、親戚のあいだをたらい回しにされている。そんななか行きついた伯父兄弟の家で体験した話だ。  伯父兄弟の兄は不潔であまり好印象ではなかった。反対に弟は親切で少年の印象は良好だ。さらにこの家にいる使用人は一番少年に親身に接してくれた。少年が兄弟の屋敷にきてから間もないころ、妙な夢を見た。犬におそわれる夢だ。やけに生々しい夢であった。この屋敷には兄しか立ちいれない塔があった。なかでなにをやっているのか非常に気になる。あるとき、兄から塔へ入ってみるかと誘われた。少年は好奇心に負けて塔をのぞいてみることにした。塔の部屋で兄がいう。「この帽子は特別でね。おのぞみの動物に変身することができるのだ」ひたすら不気味だった。少年にも兄がなにやらよくないことをしているらしいのがわかった。それと同時に使用人がこの兄に恨みをいだいていることもわかったし、弟が兄にまったく逆らえないことも理解した。少年は逃げるように塔から去った。逃げだしたい気持ちをこらえて屋敷で生活していたが、ある夜、弟が悲鳴を上げた。少年が飛びおきる。使用人も駆けつけていた。そこにいたのはあの夢で見た犬である。いまにも襲いかかりそうだ。弟は手に持った銃の引き金を引いた。犬が銃弾を受けて逃げだす。おそるおそる後を追うと、犬の死体とともに塔で見た帽子が転がっていた。  動物に変身する魔術を研究している伯父の屋敷にあずけられた少年の話でした。舞台が不気味な屋敷はおもしろいですね。
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