137

1/1
前へ
/284ページ
次へ

137

 ある港から船が出る。街のひとびとはその船を見送る。いままでに何度もくり返されてきた光景のはずだった。しかし、いつまでたっても船が帰ってこない。捜索したが、手がかりはなかった。月日はたつ。だんだんとひとびとの心から船に乗ったまま行方知らずの身内や親戚のことが消えていく。ほとんどのひとが未来を向いて生活を送っていたある日の夜、女性の家に行方不明の息子が帰ってきた。信じられない。ただ、息子はひどく疲れていて、朝まで休ませてくれ。たいへんなことがあったが、起きてから話す。と二階の寝室へのぼり眠ってしまった。このことは街中に広まった。女性の家にひとが集まる。女性は息子は疲れているから朝まで待ってほしいと、集まったひとをとどめた。そして、朝が来る。女性が息子の様子を見にいく。息子はベッドで死んでいた。  船が行方不明になり、生存者が帰ってきたと思ったらすぐに亡くなってしまう話でした。なにが起こったのかはなぞのままですね。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加