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 ある学生がいた。その学生は金持ちだが、成績は悪かった。そんな学生が試験でよい成績をとって博士号を目指すといいだした。しかも、もっともきびしい教授の担当分野でだ。友人たちはできるわけがないと笑った。その教授は生徒を落第させることによろこびを感じるタイプの人間だった。その学生は教授の講義に熱心に出席したが、特に発言するでもなく、授業中はずっと黙ってみなの話を聞いていた。あれでよい点を取れるものかとみながうたがうなか、試験の日を迎えた。結果が出る。なんと、学生は一番の成績を叩きだし、教授から博士号へ推薦もされた。友人たちのあいだでこの事件は話題になった。どうやって高得点をとったのか。学生が急に頭がよくなったはずがない。となると、カンニングだが、試験問題は厳重に管理されていて漏れる可能性はなかった。替え玉をしたわけでもない。長年なぞは解けなかった。博士号をとったその学生はその後もとの成績に戻っている。このことからもカンニングをしたのは確実だ。と、この話を友人が仲間が集まる場で話した。仲間のひとりがこんなことを言った。学生が試験問題を作ったのではないかと。学生が教授を買収して自分で試験問題を作った。それを教授へ送り、みなへ受けさせたのだろう。自分で作った問題だから高得点は当然だ。いまとなっては真相は確かめようがないが、ずいぶん手の込んだことをしていたらしい。  自分で試験問題を作る大胆なカンニングの話でした。ここまで心血を注ぎこむならまじめに努力すればよいのにと思ってしまいますね。
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