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 ある男性にはうそをつかない男として有名な知りあいがいる。その男が会社の金を盗んだとうたがわれた。男は競馬で借金を抱えていて金庫の番号も知っていた。犯人とうたがわれるのはしかたない。しかし、うそをつかない男は「わたしは金庫から現金もしくは証券の類は盗んでいません」と訴える。男性は知りあいの男がうそを言うはずはないと仲間に相談した。どうにかしてうたがいを晴らせないものだろうか。仲間は考える。ほかに犯人がいたのか。外部犯の可能性はないか。しかし、有力な仮説は出せない。行きづまっているとき、仲間のひとりが言った。たしかにその男はうそをついていないのかもしれません。「金庫から現金および証券」を盗んだのでは。この言葉を男に突きつけると、男はなにも言わず行方をくらました。  落語みたいなオチの話でした。
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