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 数年前、ある男性の妹が殺された。早朝、家にひとりいるときに強盗に押し入られて殺されたと警察は見ている。妹には夫がいて、妹と結婚する前は風来坊のような生活をしていた。結婚をしてからまともな職について生活も安定していた。ところが、妹が殺されてからふたたび生活はあれてもとのふらふらした生活に戻った。男性は妹が殺された日、いつもどおり朝はやく起きたことを後悔している。男性はいつも決まった時間に起きるのだが、事件当日もそうだった。八時に目が覚めて、すぐに妹の夫から電話があった。妹とささいなことで口喧嘩をしたから男性の家で時間をつぶさせてくれとのことだった。男性はそれを受けいれた。その結果、事件が起こった九時ごろ、妹の家には妹がひとり。強盗に殺されてしまった。この話を聞いた男性の知りあいの給仕は、ある仮説を切りだした。男性は本当に八時に起きていたのかということだ。男性の体内時計は正確だ。どんなに夜更かしをしても朝八時には起きる。だが、その正確さゆえに狂う日が一年に二回ある。それはサマータイムの日だ。つまり、男性の起きたのは八時ではなく、九時だった。それを妹の夫に利用されたのである。夫婦にどんな問題があったのかは知らないが、もともと風来坊の性質がある夫だ。妹のまじめな性格にうんざりしていたのではないか。ただ問題は事件は数年前、証拠は残っていないし、警察に行ったところで信用されるかどうか。  あらすじで書くとごちゃごちゃしてしまいましたが、サマータイムを利用したアリバイトリックの話でした。サマータイムになじみがないのでなかなかすとんと入ってきませんね。
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