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 ある大型マンションに住んでいる男性、友人たちを招いて食事をふるまう。その席で最近このマンションで立てつづけに起きている窃盗事件が話題になった。部屋の住人の留守を狙って盗みに入るものだ。男性の家も標的になった。たいしたものは盗まれなかったが、物騒である。その件とは別に男性には悩みがあった。このごろ、騒音というほどではないが、壁を叩くような音が聞こえるのだ。男性は作家で、昼間部屋で静かにしていることが多い。ほかの住人より騒音に敏感だ。だが、その音がどこから来ているかわからない。ほかの住人は男性ほど騒音を気にしていないようだし、なかには男性が幻聴を聞いているのではとうたがうものもいた。変人と認定されてはここに住みにくくなる。大型マンションに住むのも楽じゃない。この話を聞いていた友人のひとりが、そのなぞの音と窃盗事件は関係があるのではないかといいだした。これを聞いた男性がくわしく調査すると、窃盗犯は壁を叩く音で仲間と連絡を取っていたことがわかった。事件は解決し、男性は平穏な生活を取りもどすことができた。  マンションでの騒音が窃盗犯の連絡手段だった話でした。大規模マンションで暮らしたことはないですが、人間関係がたいへんそうなイメージがあります。
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