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 ある男性、機密情報を漏洩させたのではとうたがわれている。男性は船旅の途中で情報が書かれた書類を自分の部屋に置いてあることを口走ってしまった。ちょうど食事をしていたときだ。料理が運ばれてきたときにうっかり口にした。そのとき同じテーブルにいたのは六人。女性がひとり、船医がひとり、おしゃべりな夫婦がひと組、寡黙な夫婦がひと組だ。どの容疑者もテーブルをはなれて男性の船室に向かう機会があった。男性が口を滑らしたあと、まず女性が席を立った。女性が戻ってきたあと、テーブルの料理がこぼれておしゃべりな夫婦の妻にかかるアクシデントがあった。着替えをするためにおしゃべりな夫婦は部屋へ帰り、船医はやけどしていたときのために薬を取りに行った。そのさわぎがひと段落して、みながそれぞれの部屋へ帰ったあと、寡黙な夫婦の妻と男性だけが残って会話をしていた。そのすきに夫が盗んだのかもしれない。だが、この六人を調べても犯人だという証拠は見つからなかった。そのため、男性がつとめる組織は男性が情報を漏らしていたのではないかと、うたがった。この話を聞いた男性の知りあいはこう推理した。男性の話を聞いたのは六人ではないと。では、それはだれかというと、給仕である。優秀な給仕ほど目立たないが、料理がひとりでに運ばれてくることはない。  食事に同席していたうちの誰かが犯人だと思っていたら、給仕が犯人だった話でした。
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