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 ある男性が知りあいたちになぞの解明を求めてやってきた。男性が所属している組織にスパイが紛れこんでいる。しかし、そいつは末端。捕まえたところで敵対組織はなんのダメージも受けない。そこでスパイを利用しようと罠をしかけた。コインのような形のものをあえてスパイにつかませて、その行方を追おうとした。だが、スパイが行きつけの一流レストランに入って、出てきたときにはコインは消えていた。スパイはコインをどうやって仲間に渡したのか。客にまぎれて見張りをつけていた。不審な動きをすれば一目瞭然だ。しかし、レストラン入店時に左ポケットに入れていたコインにスパイはふれなかった。レストランを出たあとで渡したのではと声が上がる。だが、われわれはタクシーの運転手にも仲間を紛れこませた。スパイが乗ったのはそのタクシーだ。スパイがタクシーに乗る様子は遠くから監視していた。やつは不審な動きはしていない。タクシーに乗ったあとは別件で理由をつけて拘束し、身体検査をした。スパイの体からもタクシーからもコインは出てこなかった。では、食事のなかに隠したというのはどうだ。コインを口に入れればばれる。飲みこんだりするそぶりを見せればなおさらだ。それに従業員や厨房にも仲間を置いていた。スパイの食べ残した料理はチェック済みだ。これといった推理が出ないなか、そのなかのひとりが口を開く。タクシーはだれが呼んだのです。一流レストランだ。ドアマンがいる。では、そのときに渡したのでしょう。チップに見せかけて。ごく自然な動きです。  なぞ解きがおもしろかったです。巧妙にできていますね。
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