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 ある男性、グリーティングカードをたくさん送られ、それを展示することで有名である。妻ともども趣向を凝らしたカードが来るのを楽しみにしている。夫婦のグリーティングカード好きは有名で、専用の郵便配達員が用意されるほどだった。ある日、夫婦が出かけようとすると、エレベーターでその配達員に出会った。辞書ほどの分厚さのカードを抱えている。ちょうど自宅へ配達するところだったようだ。妻はその塊を受けとった。その後夫婦は出かけることになるのだが、その受けとったカードの束に妙なものがあった。いたってシンプルで書いてある内容は暗号のようなもの。夫婦宅に届くカードは目立つものが多いため、シンプルな外見が逆に目立ったのだ。その妙なカードを手に入れてから、妻がカードを荒らされた気がするといった。このカードのせいだろうか。男性は友人に相談する。誤って配送されたのかと聞く男性に、友人がいう。きみの家に送られたことにまちがいないだろう。犯人はカードを隠すならカードのなかと考えたのだ。しかし、きみたち夫婦が趣向を凝らしたカードばかり集めるものだから意に反して目についてしまった。きっとその配達員が受けとるはずだったものだろう。配達されるカードのなかからこっそり抜きだすことはさほどむずかしくないだろう。  たくさんのカードのなかにカードを隠そうと思ったらシンプルすぎて逆に目立ってしまった話でした。
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