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 夜中、医院にノックの音がする。医者は都会から地方へやってきた。親切だと評判である。まさか居留守を使うわけにはいかない。医者が出ると、男と女がいた。男が血を流している。なかへ入れて、状態を見る。ひどいけがだ。近くの外科へ行かないと治療できないことを告げる。しかし、女は拒否した。見ると、手に拳銃を持っている。どうもめんどうな事態に巻きこまれたらしい。やれるだけの治療をほどこす。そこへ電話がかかってきた。警察からだ。男女の強盗犯が逃亡している。気をつけてくれとの連絡。もう遅い。こっちは拳銃を突きつけられているのだ。医者はこの状況を抜けだそうと頭をしぼった。男が助からないことにしよう。このままでは死んでしまう。血が足りない。これであきらめてくれたらと思うが、女は男を見捨てて医者を人質にすると言いだした。最悪の展開だ。医者が自らの運命を嘆いていると、ノックの音が。聞いてみると警官だ。異常はありませんと答える。しかし、警官は言う。なにをとぼけている。お前を捕まえに来たのだ。この偽医者め。どうしてばれたのだろう。女に本当のことだという。さすがの女もあきらめたようだ。警官がドアを開けて入ってくる。強盗たちを捕まえて言う。話を合わせてくれて助かりました。電話での様子がおかしかったものでピンと来たのです。これを聞いていた女が悔しがる。芝居だったとは。本当のことをいっているとしか聞こえなかった。医者は暗い気分になる。どうもこの警官、勘が鋭いらしい。わたしのうそにも勘づくのではないか。  強盗から解放されたと思ったら、自分が偽医者であることがばれそうになる男の話でした。一難去ってまた一難という感じですかね。
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