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 ある男性、友人が自殺したことに衝撃を受けている。裕福な生活をしてなんでも手に入れていた友人がなぜ首をつって死んだのだ。妻と子どもは買いものへ出かけている。家でひとり。今日は世話になっている会社のセールスマンが来る。その会社からは自動調理器や自動で服装を選んでくれる機械など便利な製品を多く買っている。セールスマンが来た。新しい商品ができたので売りこみに来る。商品の代金はローンだ。男性の人生では払いきれないので、子どもの将来の年収を支払いに充てている。近所のある家は孫の収入まで支払いに回したそうだ。男性は商品を買う。セールスマンは満足して帰った。妻と子どもが帰ってくる。商品を買ったことを告げる。子どもが男性に聞いてくる。どうしてぼくに借金があるの。そういう世界なのだ。わたしたちが生きている世界は。そういって子どもを納得させる。  翌日、男性は仕事へ行く。自動化されているので、頭も体も動かす必要はない。ただ機械のボタンを押すだけだ。昔のように一日八時間働く必要はない。ボタンを押すだけなので、いくらでも別のことを考えられる。友人の自殺がいまだに心から消えない。なぜだろうとずっと考えていたが、答えが出たような気がした。便利になったが、毎日が楽しくない。  身の回りのことはすべて機械がやれるようになった世界。はたしてしあわせなのか、という作品でした。  実際にこういう世界が実現したらどうなるんでしょうね。全人類がギリシャの哲学者みたいになるのでしょうか。
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