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 ある男性、仲間とともに飛行場で待機している。敵の駆逐艦を偵察しに行った仲間の帰りを待っている。しかし、いくら待っても仲間が帰ってこない。とっくに燃料は尽きたはずだ。やられたのだろう。男性も仲間も死んだとみなして任務に戻った。ところが二日後、消えた仲間が突然帰ってきた。どこでなにをしていたのだと聞くが、仲間に記憶はないらしい。細かいことは置いて、帰還した仲間とともに爆撃任務へ向かう。敵の対空砲火で仲間がやられた。まっすぐに地面へ墜落していく。その光景を見た仲間が無線で叫んだ。思いだした。どこでなにをしていたか思いだした。仲間は基地に帰るまで叫びつづけた。かえって仲間の話を聞く。偵察へ出かけた仲間は突然雲のなかへ突っこんだという。上へ行っても下へ行っても抜けられない。どれくらいたっただろうか。機体は雲を抜けた。そこに広がっていたのは一面の空だ。その空を戦闘機が列をなして飛んでいる。地平線から地平線まで。仲間はその列に近づく。現在の機体から過去の機体、敵国も味方も関係なくみな手を振りあっている。男性はその列に加わっていたかった。しかし、男性の飛行機は列からはなれた。飛行機乗りたちが遠ざかる。仲間は夢を見ていたのだと思った。もとの世界へ戻ってきた。仲間は任務を遂行して帰ってきた。これが真相だという。戦争も終わりが見えてきたときの任務で、その仲間は死んだ。火を噴く仲間の機体を男性は見た。無線で呼びかける。仲間はおれはついているんだ。といって消えていった。  紅の豚の一シーンのモデルになった話ですね。この話の作者も飛行機乗りだということでふしぎな感じながら雰囲気があります。
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