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 ある飛行機内で殺人事件が起こる。とある会社の社長がトイレのなかで殺されていた。銃のようなもので顔が吹きとばされている。即死だろう。現場はかぎが掛かっており、密室だった。それにもかかわらず、トイレに銃は見当たらない。たまたま居合わせた犯罪心理学者が事件に取りくむ。被害者の秘書に話を聞こうとしたところ、被害者の使用人と名乗る人物がやってきた。被害者とはただならぬ関係にあるらしい。わざわざラテン語で文章のやり取りをしているようだ。被害者には重宝されていた。あのひとほどわたしをかわいがってくれたひとはいない。恩義があるのに殺すわけがないという。使用人と入れかわりに秘書がやってきた。秘書は社長にたいして悪い印象をいだいているようだ。金のためのつき合いと割りきっている。被害者は喘息を患っていた。発作が起きたときは吸入器を使って鎮めていた。プライドが高いから自分の弱みを見せようとしないらしい。被害者はたびたび社員を首にしていた。それも大勢の前で見せしめのようにだ。そのリストのなかに秘書と思えるイニシャルが記されていたことがわかる。恨みから秘書が殺したのかと思いきや、心理学者は被害者を殺したのはあの使用人だと見抜く。記されていたのはイニシャルではなく、ラテン語だった。その言葉は使用人を指すものだ。使用人は被害者が使う吸入器を改造して、使用すると死亡するようにした。愛憎のもつれの殺人だった。  飛行機という密室で起きた密室殺人の話でした。短い話で容疑者もふたりしかいないので、犯人もトリックも浅いものでした。短いなかでするどいミステリーを書ききるのはむずかしいですね。
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