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 ある男性、ホテルで休んでいると、指定の飛行機に乗れとの指示が来る。疲れているが、仕事だ。拒否はできない。送られたチケットで飛行機に乗る。座席はいつも決まっている。どうやって同じ席をとっているのか不明だ。窓側には中年の男、通路側には女性が座った。男性は自分の仕事に集中すればいい。飛行機は飛びたつ。やがて、予想外の乱気流に巻きこまれる。男性は恐怖におそわれる。このまま墜落するのではないか。仕事のたびにこの恐怖を味わう。機体ははげしく揺れる。いまにもひっくり返って、真っ逆さまに落ちていきそうだ。男性が死を覚悟したとき、揺れが収まった。となりの女性がいう。きっと落ちるのだと思った。全員死ぬのが見えたわ。空港に着陸すると、男性は女性を誘った。男性と同じ仕事につかないかとの勧誘だ。男性の仕事は予想外のできごとで墜落する飛行機に乗って怖がることである。こうすることで、なにがどう作用するかわからないが、飛行機の墜落を阻止できるのだそうだ。男性も指示に従っているだけなのでくわしくは知らない。女性にはその才能がある。恐怖にはなれないが、待遇はいい。いま決めなくてもいい。連絡先を教えてくれ。そういって男性と女性は別れた。数ヶ月後、飛行機に乗る女性のすがたがあった。  ふしぎな力で飛行機の墜落を阻止する仕事についている男性の話でした。どういう理屈なのかはわかりませんが、世のなかには超常現象的な仕事があるのかもしれませんね。
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