185

1/1
前へ
/284ページ
次へ

185

 ある女子高生、いつも朝の電車で友人に会う。女子高生は三年。友人と知りあったのは一年のときだ。いまのクラスはちがうが、行きの電車だけその友人と行動を共にする。学校や帰りはそれぞれ別々の友だちと行動していた。友人は冬になるとコートを着ていた。ポケットのなかにはいつもキャンディが入っている。女子高生は友人とすごす朝の時間を楽しみしていた。  それが今日終わる。卒業式だ。女子高生とちがって友人はクラスの中心的な人物である。東京の大学に進学が決まっているし、年上の彼氏もいる。それにくらべて女子高生は目立たないグループだ。朝以外のやり取りはほとんどない。連絡をしても返事が来ることはまれだ。いつも女子高生の発言でやり取りが終わる。よく三年間もつき合ってくれたと思う。卒業式の日、女子高生はある計画を立てていた。式の最中にトイレといって式を抜けだす。友人のロッカーを探してコートを見つける。そのポケットにキャンディをいれた。だれにもじゃまされない友人との思い出だ。自己満足だが、それでもいい。とくに親しいわけでもない友人だ。東京へ行ったら二度と会わないだろう。  卒業式が終わり、女子高生が友だちと学校を出ると、友人の彼氏が車で迎えに来ていた。面識があったので呼ばれる。そこで友人の彼氏から、友人は親しいひとに返事を返さないこと。女子高生の話をよくしていたことを聞かされた。友人にとって女子高生は朝の時間だけのつき合いではなかったのだ。気分が晴れた気がした。  青春の話でした。主人公の少女が思っていたより、友人が少女のことを大切に思っていたことを知って少女の考えが変わる話でした。理想的な青春ですね。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加