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 ある女性、ひとり暮らしである。夫は数年前に亡くなった。娘と息子がいて、孫もいる。ジャムを作って子どもたちに送るのが生きがいだ。ジャムづくりをきっかけにブログをはじめるほどだ。ブログをきっかけにした友人もできた。しかし、ジャムを送る行為は子どもに不評である。おさないころから教育してきたつもりだが、家をはなれたとたんに、心の距離も遠くなった。わたしがめんどうをみてやったのにとの思いがぬぐえない。むしゃくしゃした女性はブログで知りあった男性と会うことにした。相手も妻に先立たれている。ふたりで東京を回る。男性は女性に会いにわざわざやってきたのだ。泊まらないかと誘われる。女性は突然怖くなった。断る。男性は無表情だった。翌日からブログが荒らされるようになった。助けを求めて子どもたちに連絡をするが、女性の話を聞いてくれない。女性のなかでなにかが切れた。女性はブドウのジャムを作る。できたての熱いジャムを部屋中にぶちまけていく。すべてのジャムを吐きだすと、女性は玄関から外へ出ていった。  夫に先立たれて、子どもは自立し、ひとりになった女性のもやもやした話でした。実際にあり得そうな設定ですね。
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