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 ある女性、離婚して実家で暮らしている。母親の介護と仕事の両立の日々だ。妹は結婚をして家族と暮らしている。ひとりで介護をするのは限界なので、ヘルパーを頼んでいる。母親はそのヘルパーを気にいっているし、なんとか毎日が回っていた。  女性は子どものころから母親のいうことをよく聞いてきた。母親のいうことに逆らったことは数えるほどしかない。そのひとつが結婚だった。夫を母親に会わせたときに、もうちょっと考えたほうがいいんじゃないかしらといわれた。しかし、女性は夫を逃したくなかった。結婚してすぐ、夫の会社が傾いた。ストレスのはけ口が女性に向く。関係が崩壊するのははやかった。  学生時代に妹から言われたことがある。お姉ちゃんは自分でものを考えないと。当時遊びまわっていた妹だ。心配するのは妹のほうではないかと思ったが、離婚して実家で母親の介護をしている自分と、結婚して世間でいうまともな母親になった妹を比べると、正しかったのかもしれない。女性はいまでも他人を頼りにしている。ものを買うときもレビューなしには買えない。他人がいいといったものがいいのだ。  あるとき、勤務先でヘルパーのうわさを耳にした。老人を虐待していると。不安がよぎる。仕事は正確にやってくれるし、母親との関係も良好だ。あくまでうわさと聞き流そうとする。そこへ、ヘルパーから連絡が来る。買いものへ行く途中で母親が転んでけがをした。女性の脳裏にヘルパーが母親をつき飛ばしている光景が浮かぶ。急いで家に帰る。母親は軽いかすり傷ですんだようだ。ヘルパーを派遣している会社から連絡がある。ヘルパーを変えるかどうか。女性は悩む。このヘルパーに任せて大丈夫なのか。うわさがある。母親との関係がある。自分で判断を下すしかない。女性はヘルパーを信用することに決めた。ひとの意見に左右されるのはもうごめんだ。  だらだらと長くなってしまいました。どの程度まとめるかの加減がむずかしいです。短くまとめるなら、他人のいうことばかり聞いてきた主人公が、自分で決断をする話でしょうか。  他人と比べるなといいますが、世のなか自分より他人のほうが圧倒的に多いわけですから難儀なものです。
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