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 飛行機が飛んでいる。機内は空いていた。飛行機は雲へ入り、機体に雷が落ちた。その直後、エンジンに異変が発生した。乗務員が緊迫した声でアナウンスをする。落ちついて。乗務員は客席を回って、客の様子を確認する。ところが、どの乗客も落ちついたものだ。それどころかみな死を受けいれている。ヤクザの娘と駆け落ちした男。殺人を犯した主婦。任務に失敗して処刑されそうなスパイ、金を横領したことがばれた会社員。むしろ墜落してよかったといいだす上客ばかりだ。それでも乗務員はまじめに勤務をつづける。いよいよ、海へ墜落する。窓の外を見た乗務員が叫んだ。近くに船がいます。救命具をつけて泳いでいけば助かるかもしれません。そういったとたん、どこからともなく手が伸びて乗務員の救命具をはぎ取り、手足をいすにしばりつけた。  死ぬのが普通という異様な空間の話でした。価値観がひっくり返った世界はおもしろいです。
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