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 田舎である家族が暮らしている。両親と子どもふたりの一家である。その家族は無能もので、近所から疎まれていた。とくに隣人は家族の被害を受けることが多く、朝起きるとにわとりが脱走してきたことが何度もあった。そのたびに隣人はにわとりを撃ち殺した。  そんな家族には夢があって馬車を買いたいというものだ。夢の実現のために家族はまず引き取り手のない馬を買った。そして、両親が馬車を買いに出かけているあいだ、子どもたちは一日中馬を乗りまわした。夕方になるころ、馬は体力の限界を迎えて、地面に倒れた。死んだのだ。子どもは無責任にも逃げてしまった。その馬を発見した隣人は、一家の両親が帰ってくるのを待った。戻ってきた両親に馬が死んだいきさつを説明して、自分の車で遺体を運ぼう。あなたの敷地に埋めてやるといいといった。  にわとりを撃ち殺していた隣人ですから馬の死体を見たときにどれほど起こるだろうと予想していたら、やさしい対応をする話でした。人間のアウトセーフのラインの見極めはむずかしいです。
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