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 ある女性、結婚していた。もと夫は別の女と夫婦になっている。もと夫はふたりの子どもと会うために女性の家に来ることがある。近くに住んでいるのだ。そのとき夫は妻もつれてくる。なんともいえない気持ちになるものだ。そんな夫も妻を連れて遠くに引っ越すことになった。転居先で結婚式を挙げるらしい。二度と会えなくなるわけではないが、会う機会はぐっと減る。女性はこれを機に自宅に残されていた夫の持ちものを返すことにした。読みかけの本、片方しかない靴下。出発する夫へ押しつける。夫は本を受けとって、靴下をポケットに突っこんだ。半分飛びだしている靴下を見て、女性は夫と暮らしていたときのことを思いかえす。靴下に穴が開いたままはいていたな。雑にはくものだからいつも汚れていた。夫は遠くへ行ってしまうけれど、靴下のことはいつまでも覚えているだろう。  夫と別れた妻が靴下をきっかけに夫婦で暮らしていたときのことを思いだす話です。なんかふと昔のことを思いだすことがあるのでしょうね。
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