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 ある男性、ひとを殺そうとしている。しかし、犯罪ではない。合法に殺人ができる時代なのだ。ひとの闘争本能は抑えられない。下手に戦争という形で爆発させるより、ひとを殺したいひとにはひとを殺させておけというわけだ。仕組みは簡単。殺人組織に登録すると、標的が知らされる。そいつを殺せば勝ち。返り討ちにあえば負けだ。狩りのようなものである。そして、一回狩りをしたあとはかならず標的を務めなければならない。決まりを守らないものは処刑される。標的側は自分が標的になったことしか知らされない。狙ってくる相手は不明である。また、殺人組織以外の人間を負傷させたものも問答無用で死刑になる。ひとを殺したいひとのみで狩りがくり広げられる。  男性の標的は若い女性だった。いままでにないタイプだ。男性は女性の住んでいる街へ出向いた。女性はすぐに見つかった。街なかのカフェでコーヒーを飲んでいる。まるで警戒する様子がない。男性は戸惑った。銃の引き金を引けばいつでも殺せる。それができなかった。男性は自分でもおどろくことに女性に話しかけた。女性は売れない俳優をしているらしい。殺人組織に登録したが、標的を殺せなかったという。きっとわたしは殺されるわ。標的になっているのと女性はいった。男性は自分がその相手だとばらした。簡単に言えば女性に恋をしてしまったのだ。愛する女性を手にかけることはできない。女性は男性を自宅に招いた。そこで男性は女性に告白する。結婚してほしいと。しかし、女性からの返事は拳銃の弾で返ってきた。女性の演技にだまされていたのだ。うすれゆく意識のなか女性の声が聞こえる。これで十人目だわ。  合法的な殺人に関するかけ引きの話でした。男性はみごとに女性にだまされてしまいましたね。
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