260

1/1
前へ
/284ページ
次へ

260

 ある青年、母親を亡くした。サンドイッチを作るといって母親は死んだ。家に残されたのは父親と青年だ。ふたりが母親のことを話題にすることはほとんどない。会話自体があまりなかった。生前の母親がもしわたしが亡くなったらこの家のだれがしゃべるのよといっていたのを思いだす。食卓にはふたりぶんの食器しか並ばない。たまに以前のくせが出て三つ皿を出すことがある。そんなときは父親と母親についてすこし話す。父親は青年をこの家から出させようとしているようだ。青年までいなくなったら父親はどうするのだ。ふたりのいまでさえ広いのに、父親ひとりでは大きすぎるだろう。  母親を亡くした青年の話でした。ものさびしい空気が最初から最後までつづきました。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加