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 ある夫婦、家の庭に来る鳥に餌をやりはじめた。最初は警戒して食べなかった鳥も、徐々に夫婦になれてくる。そのうち窓を開けていると、窓辺にとまるようになった。ところが隣に住んでいる大家はこれを快く思わなかった。畑をやっているので、鳥に作物を荒らされるのではと不満に思っているようだ。それでも夫婦はなんとか大家を説得し、鳥との交流を深めた。冬がやってくる。鳥はこのまま居つくだろうか、それともあたたかい山へ帰るだろうか。夫婦の心配が的中したのか、ある日を境に鳥のすがたは見えなくなった。きっと春になったら戻ってくる。そう思った。冬のある日、夫が大家の倉庫の掃除を手伝っていると、罠を見つけた。羽毛がついている。夫は聞いた。よくまとめて罠にかけましたね。寒さで固まっているところを一網打尽さ。夫は妻にはこのことはいわないでおこうと思った。春が来て使い道のなくなったエサが腐りはじめた。夫婦はそれを捨ててしまった。  庭に来る鳥へ餌をあげていた夫婦ですが、鳥の運命は残酷なものでしたという話です。まあ、この結末はありがりですね。
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