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 ある男性、幽霊の出るといううわさの納屋でひと晩を明かすことになる。納屋の持ち主もともにすごすことになった。その昔、首つりがあったという。いままでに納屋に入ったひとはみなおかしくなってしまった。なかには自殺したひともいる。納屋の持ち主もすこしはいっただけで異様な雰囲気に耐えきれなくなった。夜が来て、男性と持ち主が納屋に入る。たしかになにかを感じる。見られているような気味の悪い空間だ。納屋に入るなり、持ち主の様子がおかしくなった。饒舌にしゃべりだす。恐怖心を話すことで追いだそうとしているのだ。男性は持ち主の話を適度に聞き流しながら物音に耳を澄ませた。小さな物音も気になる。持ち主の話は止まらない。とてもひと晩は持たないだろう。予想どおり限界が来る。持ち主は眠ってしまった。かくいう男性も眠気がひどい。眠っては幽霊の正体がつかめなくなる。しかし、男性は眠りに落ちる。夢を見た。ひどい悪夢だ。はっとして目を覚ます。持ち主のすがたを探すが、消えていた。どこへ行ったのだろうか。男性が納屋を見回す。梁の上に持ち主はいた。両手両足を梁につけて獣のような格好をしている。表情が人間のそれではない。なにかにとりつかれている。いまにも襲いかかってきそうだ。男性はなんとかして持ち主を引きずりおろした。男性も梁にのぼり、体を当てて落下させる。男性も落ちたが、その衝撃で持ち主は正気に戻ったようだ。たしかに凶悪な霊がいるらしい。  幽霊が出るとうわさの納屋での話でした。幽霊話としてはメジャーな部類でしょう。不気味な建物には近づきたくありませんね。
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