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 ある屋敷のパーティに参加した男性、部屋で着替えをしようとしていると、使用人の若者がやってきていった。この部屋では光る小さなものがなくなるのです。あいつらにいくら注意してもやめやしない。ですが、忘れたころに品物は戻ってきます。いきなり妙なことをいいだした。男性は真に受けなかった。時間が迫っているため、若者を追いだす。すると、さっきまで机の上にあったボタンがない。どこを探しても見つからない。しかたなく男性は若者を呼びだした。ボタンがなくなったことを伝える。若者はこういうボタンでしょうかと男性がなくしたボタンを差しだした。どこにあったのか聞くと、机の上だという。何度も探した場所だ。いぶかしむ男性に、若者はあいつらのしわざなのです。わたしではありません。とにかく光る小さなものには気をつけてください。たとえなくなっても返ってくるので、あわててはいけません。納得いかないながらも男性はパーティへ向かった。男性は時間が遅くなった関係で部屋に泊まることになった。若者のいったとおり部屋では頻繁にものがなくなった。ボタン、ライターなど小さな光るものだ。そのいずれもが忘れたころにもとの場所で見つかった。ここまで来ると、男性は実際に盗む瞬間を見たいと考えた。寝たふりをして視線の先にライターを置いておく。しばらくして、かすかに気配があった。何者かが部屋にいる。ライターがわずかに動いた。男性は好奇心を抑えきれなかった。ベッドの上で起きあがる。だが、その瞬間に気配はライターとともに消えた。それ以降ライターが戻ってくることはなく、部屋でものがなくなることもなかった。男性は部屋をあとにして、駅で代わりのライターを買った。  ものがなくなるふしぎな部屋の話でした。こういう部屋が実際にあったら楽しそうですね。
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