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 ある男性、会社で異動を命じられる。あきらかに首にしようという意向だ。男性はこんなひどい会社を辞めてやろうと思った。しかし、転職するにもあてがない。そのとき本屋でたまたま手に取った小説に新人賞の応募が載っていた。男性、小説を書くことを決める。どうせ、たいした仕事はない。勤務中に小説のアイデアを練る。いまに見ていろ。賞をとって辞表を叩きつけてやる。男性は意気込む。しかし、家に帰ると、妻と娘がいる。会社を辞めて家族を養っていけるのか。不安に襲われる。そんな男性に賞を主宰する会社から最終候補に残ったとの知らせが。小説家への道が現実味を帯びてきた。ここまで来たら家族に言ってもよいだろうか。男性は迷う。そして、結果が発表される日、男性は会社から衝撃の知らせを受けた。さらにひまな部署への異動を命じられた。清掃員の仕事をやれといわれた。これ以上の屈辱はない。いますぐ会社を辞めてやる。小説家になるのだ。男性は家に帰り、家族を集めた。なんの話かと妻と娘が不審がる。そこへ電話がかかってくる。賞の結果が出た。残念ながら受賞できなかったと編集者がいう。男性は愕然とした。それと同時に目の前の家族に告げた。部署が変わる。しかし、心配するな。いままでどおりまじめに働くだけだ。これでよかったのだ。賞を取れなくてさいわいだったのだ。変に迷うことはもうない。  男性にとってはこれでよかったのでしょうね。依然きびしい状況ですが、家族が即崩壊することはなさそうです。
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