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 ある編集者、作家との打ちあわせに向かう。レストランに着く。作家とその彼女がいた。やっかいものがいることにため息を漏らす。作家がうまく作品をかけないという。編集者は改善案を出すが、それにいちいち作家の彼女が口を出してくる。わたしが一番のファンなんです。あなたの言い分を聞いては彼らしい作品ではなくなってしまうわ。編集者はいらいらしながら打ちあわせを終えた。かえってこの件を上司に愚痴る。めんどうなタイプの彼女を作ったものだといわれた。なにをするにも彼女の許可をとらなくてはいけない。まるで作家のプロデューサーだ。編集者はふたたび作家との打ちあわせに臨んだ。もちろん彼女同伴だ。彼女は今日も編集者の意見を却下していく。挙句のはてにこんなやつと話す時間はむだだといってその場を去ろうとした。我慢の限界を超える。編集者が彼女を怒鳴る。彼女もやりかえしてくる。その場にあるものを手当たりしだいに投げつけた。店員に抑えこまれてようやく騒動は鎮圧した。それでも彼女は作家に聞く。わたしとこいつどっちのいうことを聞くのかと。作家が出した答えはどちらもとらないだった。  後日、彼女のもとに電話がかかってくる。編集長からだ。作家の新しい本はよいできだとの連絡だった。じつは作家はファンのことを考えすぎてスランプに陥っていた。そこで彼女は自らやっかいなファンを演じて作家の目を覚まさせようとしたのだ。もちろん、彼女は作家のファンだ。だが、それ以上に作家の妻になることを第一に考えていた。  ※ドッキリテッテレーパターンはつまらないのではないかとの疑惑がある。事情を知らない他人があたふたするのがおもしろいのだから、仕掛け人視点から書くのがよいのではないか。しかし、その場合オチはどうするという問題点が浮かぶ。爆破オチや落とし穴でテッテレーは小説で使えないのだ。  やっかいものの彼女がじつは作家のためを思って演じていた話でした。いい終わりかたをしましたが、個人的にはやっかいものの彼女と編集者のバトルが楽しかったです。
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