36

1/1

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/284ページ

36

 ある編集者、以前よくつき合いがあった作家の家へ行く。なにをいわれるのかと思ったら、引退をするそうだ。しかも、引退会見を開くという。作家に引退もなにもないのだが、断りきれずに引きうけてしまった。同期に話してなんとか会見の場をセットする。もちろん、マスコミなど来ないので、社の人間や作家とかかわりのある編集者をかき集める。清掃員にも参加してもらった。用意した席の半分ほどが埋まったところで、作家が登場する。作家は集まったひとびとの前で引退宣言をした。そして、引退するにあたって最後の小説を書くといいだした。編集者は初耳だったのでおどろいた。無理を言って掲載してもらえることになったが、渡された原稿には第一部の文字が。どうやらあの作家、最後の最後に気合いを入れて長編を書くつもりらしい。  引退会見を開こうとする愉快な作家の話でした。作家は引退とかないですね。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加