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 ある編集部、若手作家をなんとしても売ろうとする。その作家の売り上げを見るに、固定客はすくないながらもいるようなのだが、その層の見当がつかない。そこで作家の存在を世間に知らせるためPRをやることに。ハードボイルド風の作風なので、地味で平凡な見た目をアフロヘアに赤いジャケットと派手に変えた。インタビューでの受け答えも編集者が考えたワイルドなものに変える。書店を回ってサイン会をし、ラジオへの出演も行った。しかし、思ったほど売れ行きは伸びない。この作家のファンはどこにいるのだろう。  ある本屋で女子高生がその作家の本を買っていた。あの作家に共感したからだ。あの作家は自分を偽って無理をしている。そのひとが書いた小説を読みたかったのだ。  ファンに届けようとしてもなかなかうまくいかない話でした。どこに作家のファンがいるかわからないものですね。
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