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 ある女性、寝坊した。ふたりの子どもを学校に、夫を会社に送りだす。家事はまだまだ残っている。そこへ電話が。あなたの家の犬がうちのにわとりをかみ殺したとの苦情だ。女性は憂鬱になる。電話の主は犬を殺すしかないと匂わせてくる。女性の住んでいるのは田舎町だ。街を覆う連帯感は強い。なんとか助ける方法はないかと、となりの住人をたずねる。しかし、一度血の味を覚えた犬は狩りをやめることはない。殺すしかないという。なにか方法はないのですかと聞くと、死んだにわとりを首に括りつける方法があるという。にわとりの死体が腐り落ちるまで犬につけておくのだ。それで効果はあるのですかと聞くと、さあ、わたしの犬はにわとりを殺したことがないからわからないわ、との返答だった。女性は買いものへ街の店へ行く。店員に声をかけられた。小さな町だ。もう犬のうわさは広まっているらしい。ここでも殺すしかないといわれる。生かす方法はないのかとここでも聞く。腐った卵を無理やり食わせるとか、にわとりに犬の目をつぶさせるとかいう方法が帰ってきた。いい方法は見つからない。暗澹たる気分のまま昼がすぎる。学校から子どもが帰ってきた。子どもがいう。犬を殺すんだって。銃で殺すの。子どもは犬にも話しかける。お前銃で撃たれるらしいぞ。見ものだな。田園風景の広がる田舎の景色とは裏腹に女性の心はさらに沈むのだった。  問題が解決するでもなくいやな感じのまま終わる話でした。大事件が起こるわけでも派手なヒーローが登場するわけでもないですが、人間の持っている暗い部分が描かれていておもしろいです。
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