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 ある港に軍艦が帰港する。この時期になると、子どもの母親と祖母は水兵には近寄らないようにと口酸っぱく注意する。子どもたちが住んでいる場所から港までは距離があるので、水兵を見ることはめったにない。しかし、友だちと買いものに行くときは別だ。港まで行くし、軍艦の見学までする。なにかがあってはいけないので母親と祖母のほかに叔父までついていく。その年も子どもは友だちと家族と軍艦のある港へ向かった。軍艦を見学中に子どもが迷子になる。このときはなにごともなくすんだ。そのあと、映画を見る。映画館は混んでいて子供ふたりと母親たちは席がはなれてしまった。となりの席に座ったのは水兵だ。子どもは急に怖くなった。なにかされたわけではないが、映画館から逃げだした。子どもを追って母親たちも映画館を出る。このできごとがあって以来、子どもたちが買いものに出かけることはなくなった。  とくに事件が起こったわけではないですが、子どもと水兵の微妙な関係を書いている話です。
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