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 ある本屋がある。建物の地下にあり、品ぞろえは膨大だ。店のフロアには店主と客の少年がいる。そのふたりだけだ。そこへひと組の夫婦が階段を下りてきた。夫婦はいい感じの全集をふたつみっつ買いたいと店主へいった。そこへ少年がやってきてある作家の詩集を読ませてくれといった。店主が近くの本棚からその詩集を取りだして少年へ渡す。少年はすこし読んでその本を店主に返した。店主は夫婦との会話に戻る。具体的な作家はありますかと聞く。とくにないという。そこで店主は少年に言った。この客を全集のある場所に案内してやってくれ。いい全集を選ぶくらいできるだろう。少年はここの常連だ。どこにどんな本があるか店主と同じくらい知りつくしている。少年は夫婦を案内する。そこでおすすめの作家を四、五人あげて夫婦に選ばせた。少年が夫婦の言った作家をメモする。そのメモをもって店主のもとへ戻る。注文は決まった。店主が本を包装する。そのあいだに少年は店を去った。詩集をとっておいてくれと言い残す。できるだけとっておくと店主は答える。少年がいなくなると、夫婦はその詩集を見せてくれといった。店主が見せる。夫婦はこれも包んでくれといった。店主はわかりましたといって詩集を包んだ。  少年の詩集は買われてしまったのか、それとも少年は本を買わせるためのサクラだったのか、気になる話でした。地下にある本屋の描写が雰囲気があってよかったです。
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