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 ある街で一年に一回くじ引きが行われる。住人全員が参加者だ。子どもから老人までみなが街の広場に集まる。代々使われている黒い箱に紙製のくじが入っている。それを順々に引いていく。全員が引きおわったら、くじを開く。今年はだれが当たるのか。ひとりの主婦のくじに黒い丸がついていた。自分が当たったと知った女性はわめきだす。フェアじゃない。このくじはフェアじゃないと。しかし、長年つづいてきた儀式だ。街のひとびとは粛々と儀式を遂行する。大小さまざまな石を用意する。それをもって女性をとり囲む。  不条理な話でした。でも、おもしろいですね。いまの世のなかも同じようなものじゃないでしょうか。
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