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 ある女性、精神を病んでいる。夫と共に生活をしている。  昔、女性が健康だったころ、AIの開発をしていた。人間と会話するようなAIだ。そのときに同じ職場で知りあったのが、女性の夫である。ふたりはともに仕事をするうちにひかれあい、結婚した。AIの開発も順調だった。しかし、ふたりに子どもができたときに悲劇は起こった。子どもは百日も生きられなかった。そのうえ、女性は二度と子どもを作れない体になった。それから女性はすこしずつおかしくなった。  女性が作っているAIは人間の言葉を理解しているわけではない。情報としてこの会話にはこの文章を返せばいいといった作業をくり返しているのだ。だが、人間はどうだろう。感情と呼んでいるものがただの言葉の変換機だったら。AIとなにも変わらないではないか。女性は自分が生きているのか、不安になった。これで何度目かわからない自殺を図る。夫に気づかれて救急車を呼ばれる。愛しているわ。女性が部屋にあるAIに語りかける。AIは受けた言葉にふさわしい返答を探しだし、女性へ返す。わたしも愛しているわ。  AIと人間の差はどこにあるのかという話でした。昔からあるテーマの話です。
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