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 魔法が使える一族がいる。その子どもについて両親が話しあっている。あの子はなにかの役に立つのかと。子どもはそれを聞いてわたしは役にたつと言いきる。この子どもはあらゆるものに乗りうつれる特殊な力を持っていた。両親が話している途中にもかかわらず、子どもは飛びたつ。川や石、鳥や人間のなかを飛んでいく。あきれる両親のもとへ、人間である叔父がやってきた。一族にとっては好ましくない人物だ。その叔父がいきなりやってきて、子どもはいるかとたずねる。なんの用かと聞くと、頭のなかで鐘の音が鳴りひびいてうるさい。子どもの力で治してくれとのことだった。治してくれなければ、お前たち一族を警察に突きだすと。魔法使いは処刑される時代だ。だが、両親はその要望を突き放す。それに子どもは一度飛びたったらいつ戻ってくるか親にもわからない。叔父はいらだって子どもを探しに行く。街なかを探し、郊外を探し、子どもに目を光らせるが、見つからない。そのあいだにも脳内の鐘の音は大きくなる。頭がおかしくなってしまう。叔父はふたたび一族の家をおとずれる。子どもを出せと怒鳴る。しかし、ついに子どもは見つからない。叔父は鐘の音に飲まれて倒れてしまった。そこではじめて子どもが出てくる。わたしがやっつけてやったわ。どう、わたしも役に立つでしょう。  魔法の一族を扱った連作短編のなかの一話です。ファンタジーファンタジーしているので、独立して読むとあまりよさがわかりませんね。
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