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 ある男性、道のまんなかに卵が落ちているのを見つける。不自然だ。だれかが意図的に置いたとしか思えない。鳥の卵だろうか。男性は卵を拾うと、自宅へ持って帰った。まだ生きているようだ。あたためれば孵るかもしれない。正体を知りたい男性は卵を孵すことにした。一日中身につけて卵を温める。何週間かすると、卵のなかが明るくなった。しかし、いっこうに殻が割れる様子がない。しびれを切らした男性は空に小さな穴をあけてなかをのぞいてみた。そこには家があり、道路があり、車が走っているではないか。卵のなかにひとつの世界があった。信じられない。ひと晩たつと卵の穴はふさがった。さらにわかったことはこの卵を温めつづけないとなかの世界が死んでしまうことだ。こんなやっかいなことはない。世界の命運を握るのは荷が重すぎる。男性は卵をもって道路のまんなかに置いた。こうすればだれかが拾ってくれるだろう。  ふしぎな卵の話でした。ひとからひとへとどんどん渡り歩いていくのでしょう。
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