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 ある少年、屋根裏部屋にこもっている。下の階では洗濯機が乱暴な音を立てて衣服を洗っている。祖母と祖父が少年を呼ぶ。だが、少年は屋根裏部屋から出ようとしない。そこには兄がかぶっていた帽子がある。父親のシャツがある。母親の服もある。いまは三人ともいない。死んでしまった。少年は部屋でそれらの衣服とすごす。いっしょにいれば家族が生きかえるような気がした。  だが、祖母が屋根裏部屋の汚い服を見つけた。少年が懇願するのを無視して洗濯機にほうり込む。洗濯機が服にしみ込んだ思い出を洗い流す。少年にとっての家族は消えてしまった。  オーソドックスな感動話でした。なんだかんだ王道の話はおもしろいですね。
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