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 ある少年、湖で友だちの女の子を亡くしていた。女の子の死体は見つからなかった。少年は引っ越すことになり、湖にやってきた。女の子の名前を呼ぶ。返事はない。少年は砂の城を半分つくり、湖へ向かって話しかけた。ぼくが半分作ったからあとはきみが作ってくれよ。こうして少年は生まれそだった土地に別れを告げた。  移りすんだ土地で少年は大人になり、結婚した。新婚旅行に生まれそだった土地をたずねる。そこであの湖に立ち寄った。浜辺を歩いていると、救助員が黒い袋を引きあげているのを見かけた。少年は駆けよる。救助員に聞くと、何年も見つからなかった遺体だという。あの女の子にちがいない。少年は砂浜を見る。砂で作った城が立ててあった。城のそばには小さな足あとが湖からやってきて、戻っている。少年は昔に戻った。  きれいな話でした。たまにはこういう話もいいですね。
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