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 ある老人、自分のための棺を作っている。一般的な棺よりひと回りもふた回りも大きい。それを老人の弟が見ていた。弟は兄に養ってもらっている。兄弟仲はよくない。この棺に関しても、兄が「この棺は重要な発明品だ。いずれ世界に必要とされる」といっていたので、弟は気になってしかたない。だが、兄はなにが特別なのか教えてくれない。  そうこうしているうちに棺は完成し、兄は死んだ。弟は葬儀社に連絡し、普通の棺に兄を入れて埋葬させた。邪魔者は消えた。兄が作った棺の秘密を暴くときだ。弟は棺に兄の財産が隠されているのではないかと考えた。おそるおそる棺のなかへ入ってみる。すると、ふたが自動的にしまった。なかから押しても開かない。焦っていると、兄の声がする。弟の死を悼む台詞が流れた。棺は自ら動きだして、庭へ向かう。そのあいだに注射器が出てきて、弟の体に薬品を注入し、血を抜く。棺から飛びでた腕が地面を掘って穴をあける。いまにも死にそうな弟を乗せて、棺は土のなかへ収まった。  弟のための棺だったという話でした。おもしろい埋葬の話は読んでいて楽しいです。
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